院長ブログより転載+アルファ
国際頭痛学会(IHC 2005)レポート
update: 2005.10.16
目々澤醫院
目々澤 肇
平成17年10月9日(日)から12日(水)まで、京都国際会館にて第12回国際頭痛学会(12th Congress of the International Headache Society)が開催されました。ブログでは何回か投宿先のホテルからレポートをアップしておきましたが、マスコミで紹介された部分へのコメントも加えて、ひとまとめのページを設けました。ご参考になれば幸いです。
10月9日午前中の教育セッションの後、午後から改めて開会式となりました。会長の北里大学坂井教授の挨拶の後、厚生労働大臣・京都府知事・京都市長(どれも代読ですが)などの挨拶があり、頭痛に関する「京都同意書」なども発表されました。薬理学のセッションはちょっと退屈でしたが、その後のセッションではとうとう「頭痛最中の機能的PET画像」まで紹介され、「とうとうここまで来たか」という印象を深めました。
今回の学会参加キット。事前登録で会費約6万円。プログラムはタイトルのみで抄録は雑誌「Cephalaigia」に収録(分厚くなくてラッキー)。学会名の入ったTシャツと「レルパックス(片頭痛治療薬)」の銘が入ったリュックサックが付きます。
ポスター会場に用意された片頭痛治療薬「イミグラン」のグラクソスミスクライン社ブース。「和の空間」を持ち込み、和服のアテンダントがお茶や和菓子をサービスしていました。
片頭痛治療薬「マクサルト」のエーザイ社ブースにおられた画家のジョエル・ナカムラさんです。同薬のプロモーションに用いられているイラストを描かれました。リプリントにサインしていただきました。
メイン会場脇にあったファイザー社「Photo
Service」のコーナー。ひとりで来て来場記念写真が撮れない場合はこうしたサービスが大事ですね。ポラロイドでも撮影してくれるようでしたが利用者はほとんどいませんでした。10日には京銘菓「おたべ」のサービスをはじめていました。
初日のため、「Welcome
reception」がありました。わざわざ会場を京都に選んだだけあり、井上流舞踊の井上八千代さんが会場池の中に設えられた舞台で「猩々」を踊り、また鼓とシンセサイザーのコラボレーション、100発近くの花火など、来場者(どう考えても日中会場に居た人数より多い)をうならせました。ふと気づくと、スグ脇に会長の坂井先生ご夫妻がおられました。どうもアレンジは同席していたなかにし礼さんらしく、ひととおりのアトラクションが終わると坂井先生と一言二言かわして席を立たれました。さすが!ですね。また、フィレステーキ、ホタテ貝の姿焼きとともにサービスされた焼きサンマは坂井先生の奥様のアイディアだそうです。ポン酢和えの大根おろしがgoodでした。
国際学会のWelcome
Receptionは奥さん連れが原則。院長のカミさん(中央)も忙しいスケジュールをぬって登場。左は福内明子先生(東京女子医大麻酔科:慶應義塾大学神経内科前教授ご夫人)。右は鈴木博子さん(慶應義塾大学神経内科鈴木則宏教授ご夫人)。お二人の慶応神経内科トップレディーと記念撮影。福内先生とはかれこれ20数年ぶり、鈴木さんとは15年ぶりの再会でした。
獨協時代の先輩、鹿嶋先生ご夫妻。札幌で「かしま内科クリニック」をご開業なさっておられます。会場でお声をかけていただいてようやく気が付きました。かれこれ25年ぶりでしょうか。今度札幌に行くときにはおじゃまさせていただきます。
これまで、片頭痛の起こるメカニズムは「cortical
spreading depression(以下SD)」という、実験的にはKClを脳表に滴下したときに生じる脱分極(電気刺激反応)のモデルが適合するのでは、という仮説がたてられていました。現在、この仮説が仮説でなく、同様の電気反応が実際のヒトの脳でMRIやPETなどを用いて観測されるにいたり、片頭痛研究においてこれまで主として脳虚血レベル(反復的cortical
SDが脳保護作用を有する、というメカニズム)で用いられてきたcortical SDが片頭痛のメカニズム研究に取り入れられるようになってきました。そうした観点から、今回の学会のひとつのメインである、脳虚血研究の大家:
Michael Moskowitz教授(アメリカ)の発表は非常に重要でした。発表後のディスカッションもFerrari教授(イタリア)や、Olssen教授(デンマーク)などと丁々発止の内容で白熱していました。
そうした流れの中で、一般演題でしたが興味を引かれたのがKevin
Brennan先生の講演で、cortical SDが発生する様を画像記録しデジタル処理を行い脳表血管が拡張する様子をムービーで紹介していました。「発作性の脳表血管拡張」、すなわち片頭痛の発症機序が今後こうした技術などにより明確に解明されてゆくことになるものと思われます。
名古屋市立大からの発表、「中学生の5%に片頭痛がみられる」は、朝日新聞に紹介されました。この数字は片頭痛患者さんを何人も診ているとさほど不思議とは思われません。診察に来られる患者さんたちに「いつから頭痛に悩むようになりましたか?」と尋ねると約3割が「10歳代」と答えられます。結局片頭痛が始まる時期には親御さんや先生たちにそれが慢性病であることを認識してもらえず、成人して社会人となり「それって病院で調べてもらわなくてイイの?」ということになって初めて病気としての認知が始まるケースも多いようです。
親御さんが片頭痛もちならともかく、発症したばかりの学生さんが頭痛について診察を受けにみえるケースはまだまだ多くありません。こうした報道を通じて「直せる」頭痛を放置している人が少なくなることを願ってやみません。
会長をつとめる北里大学坂井先生のご講演では「片頭痛に伴う頚の痛みや肩のコリは片頭痛治療薬で軽減できる」という部分が(医師向けの)日経Med Waveで紹介されていました。
これを読んで「え、緊張型頭痛にもトリプタンが効くの?」と思った方は×。実は、片頭痛の初発症状が(前兆と呼ばれる視覚異常:キラキラしたものがみえる、見ているものがゆがむなどの症状に続いて)肩や後頭部のえもいわれぬ重さであることがわかってきたのです。そして、その症状は片頭痛治療薬である「トリプタン剤」を服用すると頭痛と共におさまる、ということなのです。
このほか、初日の教育セッションでは「アロディニア」と呼ばれる、片頭痛が進行してくるのに伴い顔面や上肢のしびれ感が出現することがあり、この症状が出てしまうと前述のトリプタン剤の効果が出にくくなってしまうことが繰り返し紹介されていました。