院長ブログより転載:国際学会参加報告
国際頭痛学会(IHC 2011)レポート
update: 2011.07.10
目々澤醫院
目々澤 肇
平成23年6月22日(水)から26日(日)まで、ドイツ・ベルリンにて国際頭痛学会総会(International Headache Congress 2011: IHC2011)が開催されました。ブログでは何回レポートをアップいたしましたが、これまでと同様、ひとまとめのページを設けました。
H.C. Diener教授が会長を務められるIHC2011がベルリン・Maritimホテルで開催されました。すでに研究から遠ざかっている自分としては、やはり実際の治療論が興味の中心となります。日本国内からは慶応・北里・獨協など、主としてポスター展示が出ていました。頭痛学会には歯科医師であるカミさんも昨年から会員になっており、夫婦揃って参加してきました。
ボツリヌストキシンA型(商品名ボトックス)は、本来顔面けいれんや痙性斜頚の治療薬なのですが、片頭痛に対する有効性が報告されていました。日本国内では名古屋の寺本先生のクリニックほか数施設で試験的に施行されているのみでした。本学会では、臨床第三相試験として行われたPREEMPT試験の成果につきメーカーがサテライトシンポジウムとして報告を行いました。手技も統一され、所定の頭頚部31箇所に各5単位ずつ皮下注射を行うように設定されました。この「31箇所」は一見大変なように見えますが、片側性顔面けいれんでも普通10箇所に注射するため、決して無謀なものではありません。一度施行すれば約三ヶ月は頭痛から開放されることになるそうです。 片頭痛の患者さんのうち、トリプタン剤がきちんと効き、予防薬服用で頭痛頻度が抑制できているかたであればこうした治療の必要はありませんが、難治型・多発型の患者さんには福音であろうかと考えられます。まだ日本では表立った実施は困難ですが、すでに薬剤は馴染みがあり安全性も確立されており、今後の方向性として対応を考えても良いのではないかと感じました。
片頭痛頓挫薬の最後の切り札として「イミグラン注」が処方できるようになって2年が経ちました。しかし、インスリン治療などと同様、自分で注射することへの抵抗と実際に注射した薬剤の痛みがなまじっかでないことが、治療継続の上でハードルとなっています。もちろん、「これしか効きませんから大丈夫です」とおっしゃる患者さんがおられるため治療法として成り立っているわけです。
展示会場で見つけたのが「Sumavel」、針のないスマトリプタン自己注射器です。実際に模型を使わせてもらうと決められた距離で定量を皮膚に噴霧するような構造です。痛みがなく、皮膚が赤くなることがあるだけと言われています。すでに、米国・ドイツなどでは医師の処方で使用が可能となっており、日本での早期の導入が期待されます。
群発頭痛は、「普段は数年はなんともない」のに、発作が始まるとほぼ毎晩「目の奥をつかみ出されるような」ひどい痛みが起こりいても立ってもいられなくなるという、日常生活に大きな影響を与える頭痛です。群発頭痛の頓挫にはイミグラン皮下注射が有効ですが、高濃度酸素の吸入も有効と言われています。日本では酸素ボンベを一般住宅に置くことが許されていませんが、入院してこの治療を受けることは可能です。市販のスポーツ用の酸素では効果がありません。また、在宅酸素療法の補助ボンベも吸入酸素量を高くしないとイマイチのようです。Linde社の展示では、群発頭痛の際に適するマスクもしくは吸入器をつけた医療用酸素が出されていました。こうした機器もマメに国内導入されると患者さんのためになるのではないかと思いました。