週刊エコノミスト 2005年5月17日号掲載 ビジネス・フロンティア
「その重要性の啓蒙と治療の実践で専門医療と地域医療をコラボレート」
ちょっと当院の患者さんたちとはあまり関係がなさそうなメディアでしたが、本来はメッセージとして脳血管障害が救急疾患であることなどをアピールしたくて取材に応じました。結局は「神経内科の特性」・「なぜ専門医療を地域医療で」というポイントになってしまいましたが、結構評判がよく、「友達から知らされたんだけど、見せられて、そう、これが私の先生よ、と自慢しちゃいました」などというコメントを患者さんからいただいたりしました。でも、自分で読み返すとこそばゆくなっちゃいます。
お誘いいただいたインナーヴィジョンズの中村さん、取材コーディネートしてくださったライトボックスの小林さんに感謝いたします。
医療法人社団 茜遥会 目々澤醫院 院長 目々澤 肇
1953年生まれ。81年獨協医科大学卒業。87年日本医科大学より医学博士取得、93年スウェーデン王国ルンド大学医学部よりPh.D. (Doctor of Philosophy)授与。日本医科大学付属第一病院内科医局長などを経て、医療法人社団茜遥会目々澤醫院院長、及び日本医科大学内科学第二講座非常勤講師。
■神経内科を地域医療に取り入れる
思考する、呼吸する、ものを見る、会話する、手足を動かすなど、私たちの日常生活は、神経の働きによって支えられている。この神経組織に障害が生じると、そのまま日常生活に支障をきたすということは想像に難くない。この神経組織の障害によって起こる数々の症状、例えば脳卒中(脳梗塞、脳出血など)や脳腫瘍、頭痛性疾患、めまい、ふるえ、もの忘れなどの疾患を検査・診断し、主として薬物療法や理学療法などによって高度な専門治療を行うのが「神経内科」だ。
「神経内科は、『心療内科』と混同されやすいのですが、心療内科は心の病で身体に症状が出る、いわば精神科に近い科目で、精神的な問題がもとであらわれる各種の症状に対応します。これに対して神経内科は脳や脊随、末梢神経、そして筋肉の障害による身体疾患を扱います。精密な問診やテストで病気を診断し、投薬や理学療法で対応できるものには専門治療を施し、脳腫瘍、脳動脈瘤など外科的処置が必要な場合は、脳神経外科に紹介します。まずは神経内科で診察を受けてから、必要があれば他の専門科・医療機関を紹介してもらうことをお勧めします」と話すのが、東京都江戸川区で神経内科を中心に、内科、小児科、耳鼻咽喉科を診療科目として開業する目々澤醫院の目々澤肇院長である。現在、日本医科大学付属千葉北総病院で神経内科外来(金曜日)も担当。総合病院でないと受診できない専門医療領域のイメージがある神経内科を、開業医として積極的に地域の人々に接し、厚い信頼を獲得している医師である。
■専門医としての義務感と自信
地域の開業医として神経内科に力を注ぐということは、採算性や患者確保の面で非常に難しい面もあるはず。そのことについて、「当院は祖父の代からこの地で三代続いている開業医です。地域医療に尽くすことは子供の頃からの家業に対する思い入れではないでしょうか。それに獨協医大や日本医大での博士課程、ルンド大学(スウェーデン)留学などで一貫して学び、身につけた神経内科の専門知識や技術を人々に提供したいという、医師としての明確な義務感があったからです」(目々澤院長)。日本医大千葉北総病院の外来担当ばかりでなく、日本脳卒中学会、日本神経学会、日本老年精神医学会、その他の学会に積極的に参加し、医師としての最新の医療技術や情報の収集、他の分野の医師との交流をすすめ、同時に、神経内科診療に不可欠な各種の機器(全身型CTスキャン、超音波診断装置など)は、院内に最先端のものを用意し、MRIなどは連携検査施設を整備して万全の体制を整えている。
やさしい話しかたと絶えることのない笑顔、その温和な表情のなかに、神経内科という専門性、重要性ともに高い医療分野で、地域医療に貢献する医師の義務感と自信がうかがえる。(text:植松富士夫さん、photo:山口裕朗さん)
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