インフルエンザ2004-05

*これは、院内配布されたものを掲載しています

Vol. 012

2004.11.21発行

編集人:目々澤肇

禁無断転載

Blogのインフルエンザ関連報告を添付しました

国立感染症研究所インフルエンザ流行レベルマップ

最終更新日:2005.02.03

●今年も冬を迎え、インフルエンザの季節がやってきました。さて、昨年は「ワクチンをうっていたのにインフルエンザにかかってしまった」「予約しておいたのにワクチンをうってもらえなかった」など、ワクチンがらみの問題がたくさん生じてしまいました。結局、ワクチンの有効率は約40%に過ぎなかったこと(これはワクチンの型を決める際にその年流行した方にあわせず前々年度と同じものを選んでしまったことが原因)、大きな病院で仕入れすぎて余った分を放出しなかったことなどが後になってわかりました。

●さて、高齢者はインフルエンザにかかったとき、肺炎に進展して生命予後に影響が出やすいことがわかっていますが、お子さんに関してはどうでしょうか。実は、乳幼児の場合、確率は低いものの、インフルエンザ感染に際し「脳症」をおこし、意識障害を生じたり脳後遺症を残すような危険性があります。しかし、発症48時間以内であれば有効な抗インフルエンザウィルス薬があり(まだ今のところは成人用でしかありませんが、当院では量を計算してお子さんにも投与しております)、初期治療が可能ならさほど重症化する可能性は低いはずです。ただし、このような有用な抗インフルエンザ薬のうち「タミフル」に対し、動物実験の極端なデータを元に1歳未満の症例に使用制限がかかってしまいました。したがって、場合によっては別の抗インフルエンザ薬の吸入治療をおすすめする可能性もあることをご承知おき下さい。

●お子さんのワクチン接種につき、当院では下記の3段階に分けてご説明しています。

(1)生後3〜6ヶ月程度のお子さんでは出生時のお母さんからもらった免疫があり発症する可能性は低いとされており、ワクチン接種の必要性は薄いといえます。この程度の状況ではお子さんよりも親御さんたちの接種の方が有効かと考えられます。

(2)6ヶ月〜1歳未満のお子さんにはメーカーや厚生労働省が指定する0.1ml接種では仮に2回接種しても充分な免疫が出来ないという報告があります。したがって、この場合もお子さんよりも親御さんたちの接種の方が有効かと考えられます。しかし、ゼロ歳児保育などでよそのお子さんたちと毎日接触していたり、感染を持ち込むご兄弟がおられる場合には、親御さんが同意してくだされば1歳以上の接種量である0.2ml接種で対応させていただきます。

(3)また、1歳を過ぎた場合は、他のお子さんとの接触も頻繁になり感染する可能性が高くなって来るため、ワクチン接種は有意義であるといえます。1歳以上は通常量での接種を行います。

●さて、先に「昨年のワクチンは効かなかった」と書きました。今年は、そうした点を反省し、昨シーズンに流行した型の株を用いてワクチンが製造されています。昨年まで、ワクチンの接種回数について「前年2回うちした人やインフルエンザにかかってしまった人は1回うちでよい」とされたのですが、今年はどうでしょうか?....実は、誰も確信を持って「こうだ」と言える人はおりません。なぜなら、現在すでに流行の始まった葛西地区で検出されたのはA型インフルエンザで、まだ本番と言えるB型は感染者がでておらず、どの型のB型が流行するかわからないのです。昨年はA型にかかった後B型にまたかかってしまったお子さんもおられます。従って、当院では今年は前歴にかかわらず2回うちをお勧めいたします。

●65歳以上の方々には公費でワクチン接種料の1/2が負担されます。江戸川区はすべての対象者に接種票が交付されましたが、お隣の葛飾区では「希望がある対象者のみ交付」という状況のようです。葛飾区からおいでの場合は区役所もしくは保健所にお問い合わせの上接種票をもらってからおいでください。65歳以上の方々は基礎免疫があるためワクチン接種は1回で充分とされていますが、当院では気管支喘息や肺気腫などの慢性呼吸器疾患をお持ちの方には2回接種をお勧めしております。

●インフルエンザワクチンは今日かなり改良が進み、アレルギーを生じる可能性は低くなっています。とはいえ、ワクチン接種に際してはは接種部の腫れ、微熱などのほか、いくつかの副反応が起こる可能性もゼロではありません。ご不明の点は接種前によくご相談ください。また、接種でご来院の際はすでにカゼひきの患者さんたちも院内に多数おられるため、できるだけ電話予約をしてからご来院くださるようお願いいたします。


以下、今シーズンのインフルエンザにかかわる当院のBlog記事を再録しました。時系列順に並べておきます。

2004.11.22(月)
 本日も山ほどの患者さんたちがお越しになりましたが、とうとう今シーズン初のインフルエンザA型陽性の方がおられました。先週、葛西から南小岩まで発生が北上していたため、そろそろかと用心していたのがその通りとなりました。
 ところで、A型インフルエンザにかかってもより重症型のB型に対する免疫は出来ません。昨年の例を見てもA型・B型の両方に感染する方もおられました。ですからいったんA型にかかったあとでも、ワクチン接種がやはり重要となるのですが、今年のA型はワクチンの中に入っている株とバッチリ適合しています。このため、すでに感染し、体の中でできた免疫とかちあって接種後の腫れなどが心配されます。

2004.11.24(水)
 Blogでお知らせいたしましたとおり、22日(月)に当院で今シーズン第1例目のインフルエンザ患者さんがでました。
 ところでこれまで3シーズン前からの当院でのインフルエンザ初検出日を調べてみると、2003-4年シーズン:12月22日、2002-3年シーズン:12月24日、2001-2年シーズン:1月25日となっており、今年の初検出がいかに早かったかがわかります。

2005.1.17(木)
 インフルエンザの患者さんは今シーズン、11月末とえらく早い時点で出現したものの、12月以来しばらく発症がありませんでした。ところが本日午前にA 型陽性の方が一人、また今シーズンインフルエンザワクチンの2度うちをしておられたにもかかわらず他院でA型陽性と言われたという報告が一件、さらに終了間際にB型陽性の方(この方もワクチンを1度受けておられます)がおられました。
 まだ「流行」といえるほどのものではありませんが、「シーズンはまだまだこれから」という印象を受けました。ご用心下さい。

2005.2.1(火)
 昨日・今日の外来はインフルエンザ反応が陽性に出た患者さんが多数おられました。親御さんからお子さんへ、またその逆、といった感染経路も目立ちます。小岩より北にある葛飾区ではまださほどでもないようですが、小岩周辺はかなりの患者数なのではないでしょうか。主体はB型ですが、A型も検出されており、その重症度もさまざまです。
 先日講演会で会った世田谷の先生は「こちらではそれほどでもないですよ」とのことでしたが、東京都全体の傾向を示す1月19日〜23日のデータでも裏付けられます。ワクチンの効果も昨年同様「?」が付きます。ワクチン接種を受けているのに発病した方がおられます。さいわい、抗インフルエンザウイルス製剤(タミフル、リレンザ)はちゃんと効果がありますので、なるべく早期の受診→投薬をお受けになることをお薦めいたします。


Med -Pressリストに戻る

目々澤醫院トップページにもどる

目々澤醫院のご案内

リンクのページ

←前号へ

Copyright (C) Hajime Memezawa, 2004 - 05