中耳炎でナゼ鼻を処置するのか

*これは、院内配布されたものを掲載しています

Vol. 005

2002.05.22発行

編集人:目々澤肇

禁無断転載

 大人は、鼻カゼをひいてもすぐに直ります。お子さんの場合は、鼻水→どろどろの鼻汁と来ると、あとはたいてい中耳炎になって高い熱と激しい耳の痛み、さらにひどい場合には耳だれを出すようになってしまいます。さて、中耳炎は耳の病気ですが、こちらへの通院が始まると処置は肝心の耳よりも鼻のほうになってしまいます。なぜでしょうか。これには、先に記した、病気の起こり方に秘密があるのです。

●耳は鼻とつながっている
 エレベータで降りるときや、飛行機が着陸態勢に入ったときなど、耳が「ツン」とくることがあります。カゼをひいてさえいなければ、たいていはちょっとつばを飲み込むなどすれば治まってしまいます。この動作は「耳抜き」といわれるもので、ダイビングをやる人たちにはとても大事な動作です。耳は、鼓膜のふるえを小さな骨で神経に伝え、「音」として認識するだいじな臓器です。この鼓膜の内側の部分は鼓膜の外側と同じ気圧の空気がないときちんとした仕事ができません。ですから、鼓膜の内側は細い管(耳管といいます)でのどと鼻の奥の部分と結ばれていて、常に空気圧がまわりと同じになるように調整されているのです。

●カゼをひくとどうなるか
 カゼは、のどの炎症です。鼻に炎症がおよぶと鼻炎になります。水鼻だけのうちはたいていウィルス性のものと考えられ、この状態のうちにきちんと鼻をかみ、栄養を十分にとって養生すればクスリなどのまずによくなることができます。だから、「大人の鼻カゼはたいしたことがない」のです。しかし、お子さんは自分で鼻がかめるようになるのはずっと大きくなってからなので、どうしても炎症をこじらせ、たまった鼻水に細菌が繁殖し、そして細い耳管を伝わって中耳炎を起こすのです。

●だから、中耳炎でも鼻の処置
 こうなると、治療の方法は抗生物質を内服し、鼻から炎症を鎮めるクスリを吸入させるしか方法がありません。鼓膜の炎症が強いときには、また鼓膜が破れてしまったり、切開された場合には耳の中にさす点耳薬を出すことがありますが、これはあくまで補助療法です。鼻からの吸入は小さい赤ちゃんには治療台の上でスプレー一発で済ませてしまいますが、できれば(聞き分けがつくようになれば)自分で吸入器を持って5分ほど吸入を続けるネブライザーが効果が大きく、治療の決め手となります。

●お風呂はだめです
 中耳炎の時は、入浴は控えましょう。特に、お風呂につかると炎症を起こしている鼓膜の内側の圧力が増し、炎症が悪化してしまいます。逆に、鼓膜の状態がよくなれば鼻がまだよくなっていなくてもシャワーや洗髪は可能となります。しかし、「ついでにちょっとお風呂であたためてあげよう」などと思わないようにしましょう。長引く中耳炎のお子さんのご家族はたいていお風呂が大好きです。また、中耳炎が治ってもしばらくの間はプールやお風呂でも「もぐりっこ」は禁物です。鼻からかかる圧力が再発の原因となるのです。ご用心。


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